獣医師解説!犬や猫の呼吸が荒い、呼吸回数が多い?〜原因、症状、治療法〜

家で、愛犬の呼吸が荒い、呼吸回数が多い...

愛犬の呼吸が荒い、呼吸回数が多いので病院に連れて行ったけど、

  • 原因がわからないと言われた...
  • 様子、経過を見てくださいと言われたけど心配...
  • 病院ではよくわからなかった...
  • 病院では質問しづらかった...
  • 混乱してうまく理解できなかった...
  • もっと詳しく知りたい!
  • 家ではどういったことに気をつけたらいいの?

という事でこの記事に辿りついたのではないでしょうか?

ネット上にも様々な情報が溢れていますが、そのほとんどが科学的根拠やエビデンス、論文の裏付けが乏しかったり、情報が古かったりします。

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その情報が正しいかどうか、信用するに値するかどうか判断することが大切です。

例えば...

  • 人に移るの?
  • 治る病気なの?
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これを読んでいるあなたもこんな悩みを持っているのでは?

結論から言うと、正常犬の立位での安静時呼吸数は毎分20~34回、睡眠時(室温24℃)は毎分18~25回、正常猫の伏臥位覚醒時の呼吸数は毎分20~40回、睡眠時は毎分16~25回とされています。

パンティングは犬と猫でみられる正常な体温調節機構であり過換気を伴わないと定義されています。

この記事では、犬の呼吸が荒い、呼吸回数が多い場合について、その理由をアカデミックな面からまとめました。

この記事を読めば、犬の呼吸が荒い、呼吸回数が多い際の症状、原因、治療法までがわかります。

限りなく網羅的にまとめましたので、ご自宅の愛犬の呼吸が荒い、呼吸回数が多いところを見つけた飼い主は、是非ご覧ください。

✔︎本記事の信憑性

この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。

今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。

臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!

記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m

» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】

✔︎本記事の内容

獣医師解説!犬の呼吸が荒い、呼吸回数が多い?〜原因、症状、治療法〜

犬の呼吸異常(頻呼吸・多呼吸)とは

犬の呼吸異常(頻呼吸・多呼吸)とは

頻呼吸(Tachypnea)とは呼吸が正常より速い状態のことをいいます。

正常犬の立位での安静時呼吸数は毎分20~34回、睡眠時(室温24℃)は毎分18~25回、正常猫の伏臥位覚醒時の呼吸数は毎分20~40回、睡眠時は毎分16~25回とされています。

過換気(Hyperventilasion)とは換気量が増大し動脈血炭酸ガス分圧が低下することを意味し、厳密には頻呼吸とは異なります。

換気量は分時呼吸数×1回換気量(呼吸の深さ)で評価されます。

例えば、呼吸数が正常範囲でも呼吸の深さが増大すれば過換気になり得ます。

呼吸の速さと深さのどちらか、または両方とも増加した状態を大呼吸(Hyperpnea)という。

パンティングは犬と猫でみられる正常な体温調節機構であり過換気を伴わないと定義されています。

パンティング様の浅速呼吸を示して呼吸困難になることがあり、これを多呼吸(Polypnea)といいます。

しかし臨床上、パンティング、多呼吸、呼吸困難を明確に識別することは困難です。

犬の呼吸異常(頻呼吸・多呼吸)の分類と問題点

犬の呼吸異常(頻呼吸・多呼吸)の分類と問題点

診察時の呼吸数のみで、生理範囲内か病的か判断することは難しいです。

呼吸数の評価には体格や年齢の影響も考慮されます。

妊娠中や消化管内容物が充満しているときには浅く速い呼吸になります。

これは横隔膜の可動域が制限されることによります。

病的な頻呼吸の場合、睡眠時や在宅での安静時でも持続的に呼吸症状がみられます。

さらに、重症度に応じ苦悶症状、運動不耐性、努力性呼吸、チアノーゼを伴います。

一方、上気道閉塞や閉塞性肺疾患による呼吸困難は必ずしも頻呼吸を示しません。

様々な呼吸困難の病態については「高頻度の疾患」に記し、ここでは呼吸の速さの異常を示す症状について述べます。

◎一過性の頻呼吸

興奮、不安、緊張、運動後、高気温、妊娠、消化管内容物充満によります。

生理的な頻呼吸です。

開口することがあります。

◎浅速呼吸

開口せずに持続的に腹式呼吸で毎分40~100回程度の浅くて速い呼吸を示します。

肺胞壁の炎症や浮腫を示す病変や、肺コンプライアンスが減少する拘束性肺病変によって生じます。

誤嚥性肺炎、気管支肺炎、間質性肺疾患、間質性肺水腫、びまん性肺腫瘍、胸水貯留などでみられます。

◎深く速い呼吸

毎分60~80回程度の深くて速い腹式呼吸を示します。

大呼吸(Hyperpnea)と表現されることもあります。

重度な代謝性アシドーシス(糖尿病性ケトアシドーシスなど)の呼吸性代償、頭蓋内疾患、急性呼吸促拍症候群などでみられます。

◎パンティング

開口し毎分200~400回の浅く速い呼吸を示します。

気温30℃以上になると明瞭に現れます。

体温調節による場合、1回換気量は極小量となり、全体としての換気量は増加しないので過換気になりません。

体温が下がれば症状は消失します。

しかし、チアノーゼや呼吸困難を伴う場合もパンティングと表現されることが多いです。

この状態は厳密には多呼吸(Polypnea)と呼ばれ、肺水腫や肺血栓塞栓症でみられ緊急度が高く、病的なパンティングといえます。

◎その他の呼吸異常

睡眠時無呼吸症候群
睡眠時に鼻呼吸できずに上気道閉塞症状が生じ覚醒します。

症状が悪化すると睡眠できなくなります。

咽頭気道の解剖学的閉塞に起因します。

犬の呼吸異常(頻呼吸・多呼吸)の病理発生

犬の呼吸異常(頻呼吸・多呼吸)の病理発生

呼吸の調節には、

  • 血中のpHや血液ガス値を介する化学調節
  • 肺内受容体を介する神経性調節
  • 大脳皮質からの意識的な調節

の3種があり、呼吸の速さや深さが変化します。

様々な基礎疾患や状態が呼吸に影響を与えますが、センサー-呼吸中枢-効果器(呼吸筋)が互いに関連し合い、フィードバック調節されています。

頻呼吸を示す症例では以下の病態が複合して生じています。

  1. 血中pHの低下やPaco2の上昇は深くやや速い呼吸となる。
  2. 肺胞壁の炎症や浮腫は受容体(肺C線維終末部)を刺激し頻呼吸や過換気を示します。
  3. 重度な低酸素血症(Pao2が50mmHg未満の場合)は末梢化学受容体(大動脈小体および頸動脈小体)を刺激し、強く頻呼吸や過換気を引き起こす。
  4. 間質性肺疾患や胸水貯留など肺の拡張が制限されるような拘束性肺病変は浅速呼吸を引き起こす。
  5. 犬や猫ではパンティングは重要な体温調節機序であり、脳の体温調節中枢によって制御されている。
  6. 短頭種気道症候群や喉頭麻痺や喉頭腫瘍などの上気道閉塞性疾患、気管虚脱を基礎疾患にもつ場合、体温上昇に対しパンティングで効率よく放熱できない。
  7. むしろ呼吸数増加が気道閉塞部位の粘膜浮腫を増悪させ、さらに体温が上昇し病的なパンティングに進行する。
  8. 熱産生をもたらすような細胞内代謝の増大によってもパンティングは促進される。
  9. これは化学的熱産生として知られ、エピネフリン、ノルエピネフリンやサイロキシンの濃度上昇によって引き起こされる。

犬の呼吸異常(頻呼吸・多呼吸)の対症療法

犬の呼吸異常(頻呼吸・多呼吸)の対症療法

  • 一過性の頻呼吸の場合
    安静環境において観察
  • 体温上昇を伴っている場合
    気温の低い通気性のよい場所に移動させ、保冷材や冷タオルを体表面に当てたり、団扇で煽いだりして外部冷却を行う。
    冷温管理可能なICUで観察するのもよい。
  • チアノーゼを伴っている場合
    酸素投与
  • 100%酸素をマスクで投与するか、外鼻孔から2cm離してチューブから投与(近接投与)します。
  • 酸素ケージなら酸素濃度30%から開始します。
  • マスク法が最も効率よく高濃度酸素を投与できますが、長時間行うと呼出障害のためPaco2が上昇するので状態をみつつ間欠的にマスクを当てます。

犬の呼吸異常(頻呼吸・多呼吸)の特徴

犬の呼吸異常(頻呼吸・多呼吸)の特徴

様々な犬猫の種類で頻呼吸を示しますが、

  • パグ
  • ブルドッグ
  • フレンチ・ブルドッグ
  • ペキニーズ

などの短頭犬種や肥満犬は上気道トラブルが多く、体温上昇を伴った頻呼吸を示すことが多いです。

  • ヨークシャー・テリア
  • チワワ
  • ポメラニアン

などは気管虚脱好発犬種であり、夏期に増悪し頻呼吸を示すことが多いです。

犬の呼吸異常(頻呼吸・多呼吸)の高頻度の疾患

犬の呼吸異常(頻呼吸・多呼吸)の高頻度の疾患

短頭種気道症候群

外鼻孔狭窄、軟口蓋過長、反転喉頭小嚢、気管低形成などにより上気道閉塞を起こします。

長時間パンティングが続けば陰圧性肺水腫を継発し重篤化します。

気管虚脱

気管が扁平狭窄しているので、パンティングが増悪します。

心原性肺水腫

僧帽弁閉鎖不全症などにより生じます。

重度の頻呼吸を示します。

甲状腺機能亢進症

副腎皮質機能亢進症

呼吸筋の脆弱化によると考えられているが、本疾患は肺血栓塞栓症の危険因子疾患であるためそれが原因で生じている可能性があります。

間質性肺疾患

全身性自己免疫性疾患、好酸球性肺炎、特発性肺線維症が代表疾患です。

肺血栓塞栓症

基礎に血小板機能亢進や凝固亢進状態を伴う疾患がある場合、発症する可能性があります。

低酸素血症、過換気となり、多呼吸を示します。

危険因子の疾患としては、

  • 自己免疫性溶血性貧血
  • 悪性腫瘍
  • 敗血症
  • 副腎皮質機能亢進症
  • 慢性腎不全
  • 全身性炎症反応症候群(SIRS)

が知られています。

熱中症

誤嚥性肺炎の急性期

気管支収縮、炎症反応による間質の浮腫と実質への炎症性湿潤のため重度の低酸素血症となります。

糖尿病性ケトアシドーシス

重度な代謝性アシドーシスの代償反応として過換気が生じ、深く浅い呼吸になります。

びまん性肺腫瘍

甲状腺癌、乳腺癌、肝細胞癌、脾臓の血管肉腫などの肺転移によります。

右左シャントを示す心疾患

ファロー四徴症、動脈管開存症末期など

肺高血圧症

肺性心などによります。

犬の呼吸異常(頻呼吸・多呼吸)の要点

  • 毎分40回以上の頻呼吸が終日持続して認められれば病的と考え診断を進める。
  • チアノーゼを伴う頻呼吸は緊急に酸素投与が必要である。
  • 体温上昇を伴う頻呼吸では第一に身体を冷やす。
  • パンティングと多呼吸や呼吸困難との識別は困難であり、楽観視せずに十分に状態を観察する。

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no life no dogs & catsをモットーに、現役獣医師が、科学的根拠に基づいた犬と猫の病気に対する正しい知識を発信していきます。国立大学獣医学科卒業→東京大学附属動物医療センター外科研修医→都内の神経、整形外科専門病院→予防医療専門の一次病院→地域の中核1.5次病院で外科主任→海外で勤務。

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