愛犬や愛猫の食欲がない、食欲不振、食欲廃絶、逆に食欲増進、食欲旺盛、多食で病院に連れて行ったけど、
- 原因がわからないと言われた...
- 様子、経過を見てくださいと言われたけど心配...
- 検査してくれなかった...
- 病院ではよくわからなかった...
- 病院では質問しづらかった...
- 混乱してうまく理解できなかった...
- もっと詳しく知りたい!
- 家ではどういったことに気をつけたらいいの?
- 治療しているけど治らない
もしくは、病院に連れて行けなくてネットで調べていた
という事でこの記事に辿りついたのではないでしょうか?
ネット上にも様々な情報が溢れていますが、そのほとんどが科学的根拠やエビデンス、論文の裏付けが乏しかったり、情報が古かったりします。
中には無駄に不安を煽るような内容も多く含まれます。
ネット記事の内容を鵜呑みにするのではなく、
情報のソースや科学的根拠はあるか?記事を書いている人は信用できるか?など、
その情報が正しいかどうか、信用するに値するかどうか判断することが大切です。
例えば...
- 人に移るの?
- 治る病気なの?
- 危ない状態なのか?
- 治療してしっかり治る?
これを読んでいるあなたもこんな悩みを持っているのでは?
結論から言うと、食欲以上は診察中には病院内での緊張により、必ずしも自宅でみせる徴候がはっきりと読み取れないことが多いです。
食欲は病態生理学的な要因だけでなく、行動学的な経緯、嗜好に関することなど複雑な機構が関係しており、判断が困難です。
また、主訴に食欲不振があっても、体格が肥満である場合、診察時に無視されてしまうことがあります。
多食症では異物をむさぼる異食(異食症)とは区別して考える必要があります。
また、過剰に食欲があっても、病的であると認識していないことも多いです。
この記事では、愛犬や愛猫の食欲がない、食欲不振、食欲廃絶、逆に食欲増進、食欲旺盛、多食の場合について、その理由をアカデミックな面からまとめました。
この記事を読めば、愛犬や愛猫の食欲がない、食欲不振、食欲廃絶、逆に食欲増進、食欲旺盛、多食の際の症状、原因、治療法までがわかります。
限りなく網羅的にまとめましたので、ご自宅の愛犬や愛猫の食欲がない、食欲不振、食欲廃絶、逆に食欲増進、食欲旺盛、多食を見つけた飼い主は、是非ご覧ください。
✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、
論文発表や学会での表彰経験もあります。
今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。
臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!
記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m
» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】
✔︎本記事の内容
犬や猫の食欲異常(食欲不振・廃絶・多食/増進/旺盛)〜原因、症状、治療法〜
この記事の目次
- 犬や猫の食欲異常(食欲不振・廃絶・多食)とは
- 犬や猫の食欲異常(食欲不振・廃絶・多食)の分類と問題点
- 犬や猫の食欲異常(食欲不振・廃絶・多食)の病理発生
- 犬や猫の食欲不振・廃絶の鑑別診断リスト
- ◎犬や猫の多食症の鑑別診断リスト
- ◎多食を示す・食べるものの削痩・痩せている疾患の鑑別診断リスト
- 犬や猫の食欲異常(食欲不振・廃絶・多食)の対症療法
- チューブ設置の特徴と設置方法
- 経腸栄養法における栄養給餌法
- 非経腸栄養法における栄養給餌法
- ◎多食症に関する対症療法
- 犬や猫の食欲異常(食欲不振・廃絶・多食)の診断の進め方
- 犬や猫の食欲異常(食欲不振・廃絶・多食)の検査
- 犬や猫の食欲異常(食欲不振・廃絶・多食)の特徴
- 犬や猫の食欲異常(食欲不振・廃絶・多食)のまとめ
犬や猫の食欲異常(食欲不振・廃絶・多食)とは
食欲とは、特定の食物を食べたいという思いで、食欲異常とは食物を摂取したいという欲求が減退もしくは消失あるいは過剰であることを意味しています。
食欲異常には、食欲不振・廃絶・多食があります。
食欲不振・廃絶とは、空腹感が病的に減退もしくは欠如していることです。
空腹中枢を直接抑制したり、その活性を低下させたりあるいは食欲を抑える働きとなる満腹中枢を刺激し、その活性を高めるような疾患の過程に関連して認められます。
多食(症)とは、食物摂取要求が適正摂取量を著しく超えている場合をいいます。
空腹中枢を直接刺激し摂食要求を高めたり、食欲を抑制する満腹中枢への刺激が低下し、満腹感が得られないことにより起こります。
食欲の抑制は、摂食行動にかかわる代謝、すなわち消化・吸収、空腹の機序と短期的栄養素の貯蔵所・長期的栄養素の貯蔵所について理解し、その代謝の開始と停止にかかわる生理的な空腹信号と満腹信号について熟知する必要があります。
食物摂取の制御には炭水化物、脂肪、アミノ酸、ビタミンおよびナトリウム以外のミネラルを適切な量を摂取する必要があるが、摂食行動・それを制御する生理機構もまた複雑です。
犬や猫の食欲異常(食欲不振・廃絶・多食)の分類と問題点
◎分類
食欲の制御には、中枢が直接刺激されることによって起こる一次性と中枢以外の領域から影響を受ける二次性とに分類されます。
その他、摂食要求が直接的な影響でない偽性とされるものがあります。
◎問題点
診察中には病院内での緊張により、必ずしも自宅でみせる徴候がはっきりと読み取れないことが多いです。
食欲は病態生理学的な要因だけでなく、行動学的な経緯、嗜好に関することなど複雑な機構が関係しており、判断が困難です。
また、主訴に食欲不振があっても、体格が肥満である場合、診察時に無視されてしまうことがあります。
多食症では異物をむさぼる異食(異食症)とは区別して考える必要があります。
また、過剰に食欲があっても、病的であると認識していないことも多いです。
犬や猫の食欲異常(食欲不振・廃絶・多食)の病理発生
摂食行動の制御には
- 代謝
- 体重調節
- 摂食の開始や終了を決定する環境要因
- 生理的要因
- 身体の栄養状態を監視し摂食行動を制御する神経機構
が関与しています。
食欲低下、食欲不振、食欲廃絶の病理
多くの疾患や障害で食欲不振をもたらしますが、これは空腹と摂食を制御している正常な神経性、内分泌性、機械的な機構を妨げることになるからです。
中枢神経による調節機構としては空腹中枢が外側視床下部に位置し、ここで食物を探し食べる情動行動が直接刺激され、摂食行動を起こします。
満腹中枢は視床下部の腹側正中核に位置し、刺激を受けると空腹中枢を抑制します。
さらに、視床下部の上位中枢では扁桃核と大脳皮質が視床下部と密接にかかわり食欲を制御しています。
扁桃核は嗅覚神経系の主要部で食物の臭気、識別にも重要です。
食欲不振の一次性では視床下部の食欲中枢を直接的に侵襲する疾患や神経性制御に直接影響を及ぼす神経性障害で起こりますが、精神障害については動物では判断が困難です。
視床下部の摂食中枢は身体の栄養状態により影響を受けます。
原則としては、栄養貯蔵が不十分の場合空腹中枢を刺激し、貯蔵が十分であれば満腹感をもたらします。
栄養貯蔵機構には短期的貯蔵と長期的貯蔵があります。
短期的貯蔵とは肝臓と筋肉にあるグリコーゲンで、グルコースがグリコーゲンにして蓄えられます。
食物をとり血糖が上昇すると、インスリンがグルコースを燃料として消費するとともに残りをグリコーゲンとして蓄えます。
血糖値が低下するとインスリン分泌は抑制されグルカゴンが分泌しはじめ、消化管が空になりグルコース値が低下すると貯蔵所からグルコースを放出します。
長期的な貯蔵は脂肪組織からなります。
グルコース、アミノ酸、脂肪が腸から吸収され、余剰分が脂肪組織に入り長期的貯蔵となります。
消化管に何もない空腹期には必要に応じて動員され、エネルギーとして利用されます。
よって、これらの経路に障害が起こる疾患はすべて食欲異常を示すことになります。
消化管からの物理的刺激としては、胃と腸の拡張刺激も摂食行動の刺激の制御に関与しています。
縮小すると空腹中枢を刺激し、拡大は満腹中枢を刺激します。
このほか頭部の咀嚼、唾液腺分泌、嚥下、味覚のように摂食に関連する要因や食物が胃へ流入するのを物理的に障害するような食道異常も摂食行動に影響を及ぼします。
多食、食欲増進の病理
多食症は通常は負のカロリー・バランスまたは、代謝率の上昇を生じる疾患により二次的に起こります。
これらの疾患は満腹中枢の抑制を起こし、食欲中枢を刺激します。
主な例としては副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能亢進症、真性糖尿病、膵外分泌機能不全、一次性腸吸収不良などがあります。
これらの疾患は多食とともに筋衰弱を生じます。
グルココルチコイド、抗痙攣薬のようなある種の薬剤は食欲中枢を直接的に刺激します。
一次性多食症は脳幹の満腹中枢を直接破壊し、重度の肥満を招く障害ですが稀です。
肥満をもたらす過剰給与は一次性多食症のもう一つの型です。
この疾患はおそらく摂食習慣を通して獲得したもので、ある種の犬種では遺伝的要因が原因となっています。
肥満の動物は摂食調節の機序の一部が欠損していると考えられます。
正常動物では、身体の蓄積脂肪が摂食量を減少させる傾向があるが、肥満動物は脂肪組織の蓄積が著しいにもかかわらず摂食を続けます。
犬や猫の食欲不振・廃絶の鑑別診断リスト
一次性食欲不振
・神経学的疾患
▶頭蓋内圧亢進:脳浮腫、水頭症 ▶頭蓋内の痛み ▶視床下部疾患:腫瘍、感染、外傷
・心因性
▶嗜好性の低い食物 ▶ストレス ▶環境変化
・嗅覚の消失
二次性食欲不振
・疼痛
▶腹部 ▶胸部 ▶筋骨格系 ▶泌尿生殖器系
・腹部臓器の疾患
▶臓器腫大 ▶炎症 ▶腫瘍
・中毒性
▶外因性:薬物、毒物 ▶内因性:代謝性毒物、内毒素、発熱物質
・内分泌性
▶副腎機能不全 ▶高カルシウム血症
・あらゆる部位の腫瘍
・感染症
・その他
▶心疾患 ▶ケトーシス(エネルギー不足) ▶車酔い ▶高温(環境温度)
▶自己免疫性疾患 ▶医原性:薬物の影響(抗癌剤、抗生物質など)
偽性食欲不振・廃絶
・口腔内疾患
▶歯根膿瘍、歯牙疾患 ▶異物 ▶口内炎、扁桃炎、咽頭炎
・舌麻痺
・下顎麻痺
・顎骨骨折、関節脱臼
・眼球後疾患
▶膿瘍 ▶炎症 ▶腫瘍
・失明
・食道炎
・持続性筋硬直
・側頭下顎筋炎
◎犬や猫の多食症の鑑別診断リスト
一次性多食症
・満腹中枢の破壊(稀)
▶腫瘍 ▶炎症 ▶感染
・心因性
▶過剰給与
二次性多食症
・代謝率亢進
獣医師解説!猫の甲状腺機能亢進症〜症状、原因、治療方法〜
甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に出されることによって起こる全身性の病気です。猫のホルモンの病気の中で最も多いといわれており、10歳以上の猫に集中してみられます。薬剤により甲状腺ホルモンを下げて全身の状態を落ち着かせるほか、手術による腫瘍(大きくなった甲状腺)を摘出する治療法があります。
・異化亢進
▶クッシング症候群 ▶糖尿病 ▶膵外分泌不全 ▶吸収不良症候群
獣医師解説!犬の副腎皮質機能亢進症:クッシング症候群〜症状、原因、治療、費用〜
コルチゾールをはじめとするグルココルチコイドは生体を維持するために不可欠なホルモンです。ホルモン過剰が持続すると代謝異常、異化亢進や易感染性など、さまざまな負の側面が現れるようになります。これがクッシング症候群(= 副腎皮質機能亢進症)です。犬では、ヒトや猫と比較して圧倒的に発生率が高く、重要な内分泌疾患のひとつになっています。
獣医師解説!犬の糖尿病〜症状、原因、治療方法〜
獣医師が解説!犬の糖尿病は、その原因や程度によって無症状からケトアシドーシスにいたる幅広い病態を示します。糖尿病の原因によって治療方針が異なるため、糖尿病の犬では、適切な診断や治療ができれば長期予後は良いです。この記事を読めば、犬の糖尿病の症状、原因、治療法がわかります。
獣医師解説!猫の副腎皮質機能亢進症:クッシング症候群〜症状、原因、治療、費用〜
コルチゾールをはじめとするグルココルチコイドは生体を維持するために不可欠なホルモンです。ホルモン過剰が持続すると代謝異常、異化亢進や易感染性など、さまざまな負の側面が現れるようになります。これがクッシング症候群(= 副腎皮質機能亢進症)です。犬では、ヒトや猫と比較して圧倒的に発生率が高く、重要な内分泌疾患のひとつになっています。
獣医師解説!猫の糖尿病〜症状、原因、治療方法〜
獣医師が解説!猫の糖尿病は、その原因や程度によって無症状からケトアシドーシスにいたる幅広い病態を示します。糖尿病の原因によって治療方針が異なるため、糖尿病の猫では、適切な診断や治療ができれば長期予後は良いです。この記事を読めば、猫の糖尿病の症状、原因、治療法がわかります。
・医原性
▶グルココルチコイド ▶抗痙攣薬
◎多食を示す・食べるものの削痩・痩せている疾患の鑑別診断リスト
・甲状腺機能亢進症(猫)
獣医師解説!猫の甲状腺機能亢進症〜症状、原因、治療方法〜
甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に出されることによって起こる全身性の病気です。猫のホルモンの病気の中で最も多いといわれており、10歳以上の猫に集中してみられます。薬剤により甲状腺ホルモンを下げて全身の状態を落ち着かせるほか、手術による腫瘍(大きくなった甲状腺)を摘出する治療法があります。
獣医師解説!猫の糖尿病〜症状、原因、治療方法〜
獣医師が解説!猫の糖尿病は、その原因や程度によって無症状からケトアシドーシスにいたる幅広い病態を示します。糖尿病の原因によって治療方針が異なるため、糖尿病の猫では、適切な診断や治療ができれば長期予後は良いです。この記事を読めば、猫の糖尿病の症状、原因、治療法がわかります。
犬や猫の食欲異常(食欲不振・廃絶・多食)の対症療法
◎食欲不振に関する対症療法
食欲不振が少なくとも3~5日続いていると推測される場合は個体の水和状態を口腔粘膜の潤い状態から観察します。
その後ボディー・コンディション・スコア(BCS)から現在の栄養状態を把握します。
BCS9段階では3以下、5段階では2以下で栄養不良と考え、直ちに栄養学的治療を開始します。
5~10%を超える体重減少は、脱水だけとは考えられないので栄養学的補充が必要となります。
栄養素の補給方法には、経腸栄養法と非経腸栄養法の2種類があります。
経腸栄養法とは、消化管を使用した栄養補給法で、様々なチューブを用います。
チューブを設置する位置により、経鼻食道チューブ、咽頭食道チューブ、胃造瘻チューブ、空腸造瘻チューブがあります。
非経腸栄養法では、前大静脈または後大静脈に設置した中心静脈栄養管理があります。
経腸栄養法
消化管の健康を維持し、細菌過剰増殖を抑制します。
また、腸管のバリア機能を改善し迅速な臨床的改善がみられます。
動物の状態が消化管を使った給与に耐えられない場合以外は第一選択となります。
食物を与え、口から食べることができるか確認します。
摂食しない場合は、与えなければいけない食物をミキサーにかけ、チューブより給与します。
チューブ設置の特徴と設置方法
経鼻食道チューブ
- 外鼻孔より栄養チューブを挿入、設置します。
- 短期的給与(7日以下)に適しています。
- チューブのサイズ3~8Frで犬の大きさにより選択します。
- 犬の場合、経鼻食道チューブの最適な長さは、鼻の先端から第七肋骨までの距離です。
禁忌→鼻孔を含む重度の顔面損傷、遷延性嘔吐や半意識状態の動物、喉頭、咽頭、食道に物理的、機能的異常がある場合
短所→径が細いため、液状物のみが適応です。
不用意に気管に設置されたり、チューブを吐き戻した際に気管へ吸い込んでしまうと、吸引性肺炎の原因となります。
咽頭食道チューブ
- 右側臥位にて、左側頸部に無菌操作にて5~12Fr合成ゴムチューブ、プラスチック製もしくは、シリコン性栄養チューブを設置します。
- 中期的な栄養補助が必要な場合に適応されます。
- 最小限の器具で軽度の麻酔下で簡単に設置できます。
- 合併症は瘻孔部における感染症です。
- 適応症は下顎、上顎、鼻部、鼻咽頭部の疾患、または把持や咀嚼ができない場合です。
- 設置するチューブの先端は、食道の中程に位置するようにし、体外に出ているチューブは、頸部に翼状テープまたはチャイニーズフィンガートラップで固定します。
- チューブを通して与える食物は懸濁状の液体にします。
- 不要となり、抜去した後は肉芽形成により2週間以内に治癒します。
禁忌→巨大食道症、食道疾患、激しい嘔吐がある場合
胃造瘻チューブ
- 直接胃内に栄養を送るチューブで、開腹手術時に外科的に設置するか、もしくは内視鏡下で胃造瘻(PEG)チューブを胃壁に設置します。
- PEGチューブは内径が大きいため市販の食物が利用でき、長期管理が可能です。
- また、経口的な摂食を妨げることなく、嘔吐によりチューブを吐き戻すこともないです。
- シリコンチューブを用いれば、6~12ヵ月の使用にも耐えます。
禁忌→合併症は設置に伴う手技的問題から、胃瘻部分の感染症や圧迫壊死、胃内容物の漏出に起因する腹膜炎などがあります。
空腸造瘻チューブ
- 直接空腸に栄養を送るチューブで、開腹術中に腸に設置します。
禁忌→通常5~8Frのチューブを直接空腸に挿入するため、使用する食物は液体の成分栄養です。
経腸栄養法における栄養給餌法
チューブ設置後、経鼻、食道瘻なら直後から、胃瘻チューブ、経腸チューブなら12~18時間後から水を与え始めます。
1日目は1日カロリー摂取量の1/2~1/3の量を給与します。
合併症を起こさなければ、給与量を徐々に増やし、3~7日かけてカロリー要求量の全量を給与できるようにします。
全量の食物を均等に4~6分割し、1回分が胃の許容量を超えない量とします。
1回の食物給与につき最初は5~15ml/kgまでとします。
食物は温めて5~15分かけてゆっくりと注入します。
1日のエネルギー要求量算出方法
1日のエネルギー要求量(DER)=ストレス係数×安静時エネルギー要求量(RER)
安静時エネルギー要求量(RER)=30×(体重kg)+70
①ストレス係数
- 外科手術:1.25~1.5
- 外傷、腫瘍:1.35~.15
- 肝・腎機能障害:1.25
- 火傷、敗血症:1.75~2.00
- 脳損傷:1.8~2.00
②胃の容量
▶犬:90ml/kg
▶猫:
- 0.5~1.0kg 100ml/kg
- 1.0~1.5kg 70ml/kg
- 1.5~4.0kg 60ml/kg
- 4.0~6.0kg 45ml/kg
③1日の水分必要量
- 犬:1.6(30×〈体重㎏〉+70)
- 猫:1.2(30×〈体重㎏〉+0)
非経腸栄養法における栄養給餌法
中心静脈カテーテルを全身麻酔下もしくは局所麻酔下にて実施します。
経腸栄養法が使用不可能な場合にのみ使用される方法で高カロリー輸液剤を用いて行います。
◎多食症に関する対症療法
一次性多食症の治療は、食物の量とカロリー濃度を制限することです。
適切な運動プログラムの指導を実践し、定期的に監視します。
二次性多食症では、原疾患の治療を行います。
犬や猫の食欲異常(食欲不振・廃絶・多食)の診断の進め方
◎鑑別のアルゴリズム
まず、動物に食物を与え、摂食行動を観察します。
これにより、食欲の有無を確認し、偽性食欲不振を確認します。
食欲があるにもかかわらず、摂食行動の異常がみられた場合
- 頭部
- 口腔内
- 咽喉頭部
の詳細な検査を行い、
- 摂食を妨げる口腔内の疼痛
- 異物
- 腫瘤
- 歯牙疾患
- 口内炎
- 舌下神経麻痺
を確認します。
嚥下困難と吐出は咽頭や食道の疾患に伴ってよくみられる徴候です。
獣医師解説!犬が吐いた!〜嘔吐と吐出〜原因から治療まで
犬が吐いた!吐き戻しは遭遇する機会が非常に高い症状です。実は、この吐いたには、嘔吐と吐出の2種類があり、全く別の症状です。自宅での犬の吐き戻しが嘔吐なのか吐出なのか、緊急性の有無が分かるのは非常に大事です。この記事を読めば、犬の吐きの原因、症状、対処法、緊急度から治療法までがわかります。
獣医師解説!猫が吐いた!〜嘔吐と吐出〜原因から治療まで
猫が吐いた!吐き戻しは遭遇する機会が非常に高い症状です。実は、この吐いたには、嘔吐と吐出の2種類があり、全く別の症状です。自宅での猫の吐き戻しが嘔吐なのか吐出なのか、緊急性の有無が分かるのは非常に大事です。この記事を読めば、猫の吐きの原因、症状、対処法、緊急度から治療法までがわかります。
診断検査にはCTおよびMRI検査、歯科用X線検査が必要となります。
食道疾患の場合は透視X線を用いた造影検査、内視鏡検査が有効です。
食欲がなく、摂食行動に異常がない場合
徹底的な全身の身体検査を実施し、さらにスクリーニングとしての一般血液検査、血液化学検査、尿検査、便検査を行います。
身体検査で聴診、触診、体温、心拍数、呼吸数に異常がみられた場合は、その所見に基づき二次性食欲不振の原因を確定します。
多食症
診断のためには、はじめに摂食量と体重、BCSを測定します。
食欲が増加し、摂食量が増加している場合
体重の増加、変化なし、減少に3分類し診断を進めます。
特に体重減少が起こっている場合には、カロリー消費が亢進する疾患や代謝率の上昇を招く障害を裏付ける所見を探します。
通常は多飲、多尿、下痢、神経過敏症、心拍数の増加のような併発している徴候を明らかにします。
全般的なスクリーニング検査として、一般血液検査、尿検査、血液化学検査を行います。
これらの検査で異常がみられない場合には、摂食量を監視し、さらに再度詳細な問診を行い、投薬や行動異常、生活習慣の評価を行います。
異常が認められた場合には、必要に応じ遺伝的素因、問題行動などのさらに進んだ検査が必要な場合があります。
神経学的検査で異常がみられた場合は、画像診断へ進む場合もあります。
スクリーニング検査で異常がみられた場合には、二次性の原因を精査します。
真性糖尿病や低血糖のようにスクリーニング検査で確定診断を得ることができる場合もあるが、T4やコルチゾールのような特殊検査や、各種刺激試験が必要となることもあります。
多食症を起こすような消化性障害のある動物では下痢や大量の異常な形態の便が認められます。
吸収不良症候群のような疾患では、膵外分泌不全のような場合にはトリプシン様免疫反応物質やその他の特殊血清学的検査が必要であります。
犬や猫の食欲異常(食欲不振・廃絶・多食)の検査
◎問診(飼い主に確認すべき項目)
- 動物の特徴(動物種、品種、性別)
- 病歴(薬物投与歴、摂食歴)
- 飼育環境
- 元気(異常興奮、鎮静、衰弱)
- 食欲(多食、減衰、廃絶)
- 体重(急激な削痩、腹部膨大に伴う体重増加、肥満)
- 疼痛の有無
- 皮膚性状(左右対称性脱毛、被毛の脱毛、発赤、発疹、痒覚、柔軟性、色素沈着、肥厚など)
- 嘔吐や下痢、吐出の有無
- 排尿時の様子(尿意の回数、尿失禁や夜尿症の有無、尿臭、色調)
- 発情の有無、交配歴、出産歴
◎身体検査(問診から得られた項目の獣医学的見地からの確認)
- 一般状態(意識状態、神経症状、衰弱、虚脱)
- 体温、心拍数(心音)、呼吸数
- 栄養(肥満、削痩)
- 皮下組織触診(脱水、浮腫)
- 腹部触診(肝臓、腎臓、膀胱、子宮における異常、腹水の有無、膨満感)
- 心音聴診、肺音聴診
- 出血の有無
◎一般血液検査と血液化学検査
- 一般血液
- 血液化学検査:総蛋白(TP)、アルブミン(Alb)、尿素窒素(BUN)、クレアチニン(Cre)、グルコース(Glu)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アルカリフォスファターゼ(ALP)、総ビリルビン(T-Bil)、γグルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、電解質(Na、K、Cl)、無機リン(IP)、カルシウム(Ca)、総コレステロール(T-Cho)、中性脂肪(Tri)など
◎追加検査
- 甲状腺機能検査:TSH、T4、fT4
- 肝機能検査:総胆汁酸(TBA)
- 副腎機能検査:副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)刺激試験、低用量および高用量デキサメタゾン抑制試験
- 炎症性蛋白(CRP)
◎尿検査
- 尿糖、尿蛋白、ケトン体、潜血、尿比重、尿沈渣(赤血球、白血球、消費細胞、尿円柱、結晶、細菌)
- 必要により、尿培養検査
◎画像診断
- X線検査
- 超音波検査
- CT検査
- MRI検査
犬や猫の食欲異常(食欲不振・廃絶・多食)の特徴
食欲減退、廃絶は様々な疾患で起こり得ますが、多くは二次性食欲不振が多いです。
多食症も二次性多食症が多く認められます。
◎好発品種
犬:
- ラブラドール・レトリバー
- ケアーン・テリア
- コッカー・スパニエル
- ダックスフンド
- シェットランド・シープドッグ
- バセット・ハウンド
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
- ビーグル
☆日本では特にミニチュア・ダックスフンド、チワワ、ヨークシャー・テリア、プードルに多くみられる。
猫:雑種(短毛、長毛、中毛)、マンクス
◎性差・年齢
疾患により異なる。
☆高頻度の疾患
徴候の程度によりあらゆる可能性があるので、鑑別疾患リストに沿って十分な検討がなされるべきです。
犬や猫の食欲異常(食欲不振・廃絶・多食)のまとめ
摂食行動はよく観察され、食欲は飼い主が最もよく気づく徴候の一種です。
一般的に旺盛な食欲が良好な健康状態に繋がると考え異常を看過していることがあります。
多くの全身疾患や局所的疾患が食物摂取に影響を及ぼします。
また、体格がよいと食欲不振があっても見過ごされる場合もあるので注意を要します。
どんな体格であっても3日以上絶食が続いた場合は、補助的な水分補給と栄養補給を考慮する必要があります。