体調が悪く、動物病院でコレステロール、トリグリセリドの検査をしましょうと言われた・・・
健康診断をしたら、コレステロールとトリグセリドの値が高値で、高脂血症と言われた・・・
本記事では頻繁に行われる検査であり、異常なことも多い高脂血症の値でもある犬と猫のコレステロールとトリグセリドについてお話しします。
- 様子、経過を見てくださいと言われたけど心配...
- 検査してくれなかった...
- 病院ではよくわからなかった...
- 病院では質問しづらかった...
- 混乱してうまく理解できなかった...
- もっと詳しく知りたい!
- 家ではどういったことに気をつけたらいいの?
- 治療しているけど治らない
- 予防できるの?
- 麻酔をかけなくて治療できるの?
- 高齢だから治療ができないと言われた
もしくは、病院に連れて行けなくてネットで調べていた という事でこの記事に辿りついたのではないでしょうか?
ネット上にも様々な情報が溢れていますが、そのほとんどが科学的根拠やエビデンス、論文の裏付けが乏しかったり、情報が古かったりします。 中には無駄に不安を煽るような内容も多く含まれます。
ネット記事の内容を鵜呑みにするのではなく、 情報のソースや科学的根拠はあるか?記事を書いている人は信用できるか?など、 その情報が正しいかどうか、信用するに値するかどうか判断することが大切です。 例えば...
- 人に移るの?
- 治る病気なの?
- 危ない状態なのか?
- 治療してしっかり治る?
これを読んでいるあなたもこんな悩みを持っているのでは?
結論から言うと、コレステロールやトリグリセライドが著しく高値の場合には動物でも治療の対象となります。
コレステロール測定は、コレステロールの代謝に影響を及ぼす各種疾病の診断補助として測定されることが多いです。
また、トリグセリドは、ヒトでは動脈硬化の危険因子として重要ですが、動物では動脈硬化による疾患が少ないとされ、他の疾患の診断補助として測定されることが多いです。
この記事は、愛犬や愛猫のコレステロール(cholesterol)、トリグリセリド(triglyceride)の値が高値と病院で言われた飼い主向けです。
この記事を読めば、愛犬や愛猫のコレステロール(cholesterol)、トリグリセリド(triglyceride)の重要性がわかります。
限りなく網羅的にまとめましたので、ご自宅の愛犬や愛猫のコレステロール(cholesterol)、トリグリセリド(triglyceride)の値について詳しく知りたい飼い主は、是非ご覧ください。
病気について直接聞きたい!自分の家の子について相談したい方は下記よりご相談ください!
通話:現役獣医による犬・猫の病気・治療相談のります 日本獣医麻酔外科学会で受賞した獣医による相談受付:画像に証拠
現役獣医による犬・猫の病気、治療相談にのります 日本獣医麻酔外科学会で受賞した獣医による相談受付:画像に証拠
✔︎本記事の信憑性
この記事を書いている私は、大学病院、専門病院、一般病院での勤務経験があり、 論文発表や学会での表彰経験もあります。
今は海外で獣医の勉強をしながら、ボーダーコリー2頭と生活をしています。
臨床獣医師、研究者、犬の飼い主という3つの観点から科学的根拠に基づく正しい情報を発信中!
記事の信頼性担保につながりますので、じっくりご覧いただけますと幸いですm(_ _)m
» 参考:管理人の獣医師のプロフィール【出身大学〜現在、受賞歴など】や詳しい実績はこちら!
✔︎本記事の内容
獣医師解説!犬と猫の高脂血症を徹底解説:コレステロール(cholesterol)、トリグリセリド
この記事の目次
コレステロール (cholesterol)
血中のコレステロール濃度は、食物からの吸収、肝臓での生合成、体外への排逆によって調節されています。
コレステロールやトリグリセライドが著しく高値の場合には動物でも治療の対象となります。
コレステロール測定は、コレステロールの 代謝に影響を及ぼす各種疾病の診断補助として測定されることが多いです。
コレステロールには、脂肪酸とエステル結合しているエステルコレステロールと、脂肪酸と結合していない遊離コレステロールが存在します。
エステルコレステロールは慣用的に総コレステロールに対する比率として表され、この比率の低下は重症の肝障害の指標と考えられています。
しかし、他の肝機能評価検査の発展とともに臨床的にはあまり重要視されなくなっています。
検査のときに気をつけること
血液検査のルーチンの項目としてよく測定されます。
また、甲状腺機能低下症など高コレステロール血症が好発する疾患が疑われる場合に検査します。
トリグリセライドとは異なり、コレステロールは食事による変動を示しません。
猫では、8週齢以下の若齢でコレステロールが高いことが知られています。
総コレステロールの参照値(単位:mg/dL)
異常となる疾患
高コレステロール血症となる疾患
- シェットランド・シープ ドッグなどいくつかの犬種で家族性の高コレステロール血症が知られています。
- 犬ではボディーコンディションスコアやレプチン濃度とコレステロール濃度が正の相関を示します(太っている犬ほどコレステロールが 高い傾向)。
- 犬や猫で、肥満例ではコレステロールが高いです。
また、高コレステロール血症は内分泌疾患と関連してみられることが多いです。
犬の甲状腺機能低下症、クッシング病の約 70%で高コレステロール血症がみられます。
医原性のクッシング病でも上昇がみられる場合があります。
その他の内分泌疾患では、糖尿病で高コレステロール血症が高頻度 にみられます。
内分泌疾患以外では、腎形成不全など腎不全、ネフローゼ症候群で 高コレステロールとなることが知られているが、蛋白漏出性腸症では低コレステロール血症となります。
急性膵炎のときに高コレステロール血症を含む高脂血症がみられることがあります。
逆に、高脂血症は膵炎発症の危険因子とされることもあります。
犬の拡張型心筋症でも高脂血症がみられることが報告されています。
一般に、胆道閉塞や胆汁うっ滞では、排泄障害により高コレステロール血症を呈することがあります。
- 家族性高コレステロール血症
- 甲状腺機能低下症
- 糖尿病
- 副腎皮質機能亢進症
- ネフローゼ症候群
- 腎不全
- 急性膵炎
- 胆管閉塞
- 肥満
獣医師解説!犬の甲状腺機能低下症〜症状、原因、治療法、治療費用〜
甲状腺機能が低下すると甲状腺ホルモンの分泌が減り、全身の代謝低下、皮膚の乾燥、脱毛、むくみ、疲労感などの不調が生じてきます。誤診も多い病気なので、注意が必要です。診断が正しく、適切なホルモン補充療法が実施されていれば予後は良いです。本記事では、犬の甲状腺機能低下症の症状、原因、治療法から治療費用に至るまで解説します。
獣医師解説!犬の糖尿病〜症状、原因、治療方法〜
獣医師が解説!犬の糖尿病は、その原因や程度によって無症状からケトアシドーシスにいたる幅広い病態を示します。糖尿病の原因によって治療方針が異なるため、糖尿病の犬では、適切な診断や治療ができれば長期予後は良いです。この記事を読めば、犬の糖尿病の症状、原因、治療法がわかります。
獣医師解説!猫の糖尿病〜症状、原因、治療方法〜
獣医師が解説!猫の糖尿病は、その原因や程度によって無症状からケトアシドーシスにいたる幅広い病態を示します。糖尿病の原因によって治療方針が異なるため、糖尿病の猫では、適切な診断や治療ができれば長期予後は良いです。この記事を読めば、猫の糖尿病の症状、原因、治療法がわかります。
獣医師解説!犬の副腎皮質機能亢進症:クッシング症候群〜症状、原因、治療、費用〜
コルチゾールをはじめとするグルココルチコイドは生体を維持するために不可欠なホルモンです。ホルモン過剰が持続すると代謝異常、異化亢進や易感染性など、さまざまな負の側面が現れるようになります。これがクッシング症候群(= 副腎皮質機能亢進症)です。犬では、ヒトや猫と比較して圧倒的に発生率が高く、重要な内分泌疾患のひとつになっています。
獣医師解説!猫の副腎皮質機能亢進症:クッシング症候群〜症状、原因、治療、費用〜
コルチゾールをはじめとするグルココルチコイドは生体を維持するために不可欠なホルモンです。ホルモン過剰が持続すると代謝異常、異化亢進や易感染性など、さまざまな負の側面が現れるようになります。これがクッシング症候群(= 副腎皮質機能亢進症)です。犬では、ヒトや猫と比較して圧倒的に発生率が高く、重要な内分泌疾患のひとつになっています。
低コレステロールとなる疾患
低コレステロール血症は、臨床的にあまり問題にされない場合が多いです。
犬では、蛋白漏出性腸症、アジソン病で低下することが報告されています。
- 蛋白漏出性腸症
- アジソン病
- 甲状腺機能亢進症
- 栄養障害
獣医師解説!猫の甲状腺機能亢進症〜症状、原因、治療方法〜
甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に出されることによって起こる全身性の病気です。猫のホルモンの病気の中で最も多いといわれており、10歳以上の猫に集中してみられます。薬剤により甲状腺ホルモンを下げて全身の状態を落ち着かせるほか、手術による腫瘍(大きくなった甲状腺)を摘出する治療法があります。
獣医師解説!犬のアジソン病(副腎皮質機能低下症)〜原因、症状、治療法〜
アジソン病は副腎皮質から分泌されるステロイドホルモンが不足することによって起きる疾患です。犬でしばしば認められ、猫では極めてまれです。 本記事では、犬のアジソン病(副腎皮質機能低下症)の症状、原因、治療法に至るまでを解説します。
異常値がみられたときどうするか
内分泌疾患など二次性の高コレステロール血症の場合は、原疾患を治療することで改善される可能性があります。
ヒトと異なり動脈硬化の危険因子とは考えられていないので、高脂血症のコントロールはヒトと比べてゆるやかです。
どの程度の高コレステ ロール血症から治療の対象とするかは明確ではないですが、トリグセリドで1000 mg/dL 以上、コレステロールが 800 mg/dL 以上で明らかな治療対象です。
治療としては、低脂肪食が基本であり、必要に応じてフィブラート系薬剤(トリグリセライドの上昇に対して)やHMG-CoA 還元酵素阻害剤(コレステロールの上昇に対して)を使用します。
低脂肪食のお勧めはこちら!
HDLコレステロールとLDLコレステロール
ヒトでは LDLコレステロールの制御が冠動脈疾患の発症予防、再発防止に有用であることが知られています。
そのため、ルーチンにLDLコレステロールが測定されます。
LDLコレステロールは直接測定されるか、HDLコレステロールの値を用いて次式で計算されることがあります。
次式はトリグリセライドの値が異常な場合などには成立しないので注意が必要です。
LDLコレステロール = 総コレステロール - HDL コレステロール - 中性脂肪/5
しかし、犬や猫では冠動脈疾患の発生頻度が少ないと考えられており、日常の診療では HDL コレステロールと LDL コレステロールは測定する機会は多くないです。
HDLコレステロールの参照値(単位:mg/dL)
- コレステロール値は食事の影響を受けない。
- コレステロールが著しく高値の場合は、原疾患を検索する。
リポ蛋白
リポ蛋白は脂質と蛋白の複合体であり、密度または電気泳動における易動度で分類されます。
蛋白含有量が多いほど比重は高くなります。
比重が低いものから
- VLDL(very low density lipoprotein)
- LDL(low density lipoprotein)
- HDL(high density lipoprotein)
が存在し、このほか VLDLとLDL の間にIDL (intermediate density lipoprotein)がみられることがあります。
リポ蛋白泳動では、a、pre-β、βに分画され、正常血清ではそれぞれ HDL、VLDL、LDL に相当します。
典型的な泳動パターンを下記に示しました。
リポ蛋白の泳動パターン
検査によってわかること
高脂血症がみられた場合、どのリポ蛋白分画が増加しているか調べたい場合に検査を行います。
正常な犬では a が優位であり、高コレステロールの犬では pre - B、Bが増 加することが多いです。
シェットランド・シープドッグの家族性高コレステロール血症では、コレステロールが低値の時にはaとpre-βの間にa2分画がみられ、コレステロールが高値になると pre-βが優勢となります。
- コレステロールが低値の時には、a (HDL)が多くを占める。
- コレステロールが高値になると、pre-B が優勢になる。
- リポテストは高脂血症の薬剤選択に用いられる。
トリグリセライド (triglyceride)
トリグリセライドは、3価アルコールであるグリセロールに3分子の脂肪酸がエステル結合した分子です。
食事として摂取される脂肪の大部分はトリグリセライドであり、腸管内で分解されて粘膜細胞内で再合成されます。
ヒトでは動脈硬化の危険因子として重要ですが、動物では動脈硬化による疾患が少ないとされ、他の疾患の診断補助として測定されることが多いです。
検査のときに気をつけること
トリグリセライドは食事による影響を大きく受けるので、完全な絶食の後に測定することが重要です。
予想外に高値となった場合には食事の影響を考慮して、必要があれば時間をおいて再検査します。
トリグリセライドの参照値(単位:mg/dL)
異常値がみられたときに疑う疾患
トリグリセライドの低値は臨床的に問題視されないことが多いです。
高脂血症の要因となる疾患を下記に示しました。
高トリグリセライド血症自体がてんかん様発作の要因になる可能性があります。
必ずしも関連が明らかではないが、膵炎、網膜脂肪腫、黄色腫がみられる場合には原因の1つとして高脂血症を考慮します。
- 特発性高リポ蛋白血症
- 特発性高カイロミクロン血症(猫)
- 甲状腺機能低下症
- 糖尿病
- 副腎皮質機能亢進症
- 薬物(グルココルチコイド、酢酸メゲステロール、など)
- 腎不全
- 膵炎
- 肝不全
- 胆汁うっ滞
異常値がみられたときどうするか
食事の影響を考慮し、絶食しているかどうか確認します。
時間をおいて再検査する場合もあります。
持続的に高値が認められる場合にはアポ蛋白分画の泳動を行い、治療を考慮する場合にはカイロミクロン、VLDL、LDL、HDL のどの分画が増加しているか判定することもあります。
1000 mg/dL 以上では明らかに治療の対象で、500 mg/dL では治療を考慮します。
治療の際には通常は低脂肪食を試し、必要があればフィブラート系薬剤などの高脂血症治療薬を使用します。
トリグリセライド負荷試験
膵外分泌不全や消化吸収障害を検出するために行われます。
- 絶食後3~4mL/kg の コーン油を飲ませ、直前、2時間後、3時間後のトリグリセライド濃度を測定します。
- もとのトリグリセライド値の2倍以上の上昇がみられれば正常です。
- 上昇がみられない場合、消化酵素剤を加えて同様の検査を行います。
- 上昇がない場合には小腸の吸収障害を疑います。
しかし、トリグリセライド負荷試験はやや煩雑であり、膵外分泌不全の診断にはトリプシン免疫測定(TLI)が用いられることが多いです。
内視鏡試験の際にあらかじめ油分を飲ませ、拡張したリンパ管を可視化することもあります。
- 高トリグリセライド血症がみられた場合には食事の影響を考慮する。
- 著しい高トリグリセライド血症では、食事療法や薬物療法を考慮する。
こんなことについて知りたい!これについてまとめて欲しい!というのがあれば下記からお願いします!